けれ共、余り竒麗ニハ無之様也、
城之外郭抔、甚不手入なり、
備後地も、尾道より芸州領ニて、
宿々と云、村々何れも@lニ見へ、
山ハ多けれ共、野も多、島々も多あり、広大之
領地なれ共、余り富国ニハあら
さる由、貧富ハ実ニ仕方限り之
事也、河之堀方と云、戸口之多、
繁華なるハ、不見三都ハ可驚
程なり、夜四ツ時分、船宿より
宮島渡ため、
船ニ乗けれ共、九過迄潮不満とて
船を不出、漸出しと思しに、又
砂ニつかへて不動、乗合ともに
陸へ上り暫歩し、又船ニ入り
けれハ又不動、乗合ハ横着者
多、不上工面をし、我、一端、
衆を励して不残上ケけれ共、
彼是する中、潮ハ追々引、 |