乍去地せまくして江戸ハ近、
其勢如何相成物か、凡慮之
難計処なり、是ニハ異船
六艘アリ、今一艘ハ本牧辺之
砂乗上、今ニ不来、五ヶ国之船と
云事なり、神奈川之帰路、
橋の上ニ待居、十人余り之異人ニ
逢、其中ニ又橋上ニて、川上より
女ニ子供を連れ、
所謂黒鬼ニかいを取らせ、下リ
行、め色ハ異なれ共、目鼻立
美人なり、橋上之見物人声
を懸ると、彼も手なと揚ケ、
声を合たり、又墨利加人
弐人と供ニ行、山坂掛らんと
する時、帰なと云て後
もとし、やゝ日本語を仕
由、先ノ数人之者ハ神奈川
之寺ニ居者、何れも見物 |