十日 雨風 ○小田原
朝五ツ半頃、雨止みし故、江島を
立、海に添て行し処、風雨
難進、漁舟之蔭ニひそまりて、
少之晴間を見合、南湖
上り、是ハ東海道藤沢と平塚
之間なり、酒匂川連(蓮)台渡、小田原ニ宿ス、時刻も
早し、松隈(クマ)謙之丞を問へ、夕方
宿帰り結髪ス、通り車(クルマ)ヲ引ク、予問故、髪
結之云、水戸(ド)車ハ三都・
名児屋・駿府・浜松・小田原外
多クハ有間敷と、兼心アル故、
記置、此日、間々晴と雖、風雨勝ニて、更ニ不楽
十一日 風雨終日 ○沼津
朝五ツ頃立、城南ノ石垣山を見、湯元より箱根ニかゝり、兼
険を楽みに思し処、如何
ニも風雨四方如不見、徒らに
艱難のみ、嘸天気ならは |