一集ニ飯を食ふ、寝ニも四人壱ツノ
蚊屋ニ臥ス、大宮ニ宿ス、此日大宮道ニ、
馬方之咄ニて、甲府之便リハ日々聞こへ、
魚も是より送ルト、甲駿より江戸
出ル処之物、紙・煙草・炭・材木・
板なと之諸品出ル由、兼思ニ、
我長岡すら、鋸山之木、已ニ尽ん
とす、况江戸、戸口之多、諸物之
不尽るを如何なる訳と思し処、
昨日伊豆人之咄、今日馬士之談ニ
始其足るを知、乍去、末ニハ如何
なる者か、可計ニあらす、此山道ニ
毒荏と云木アリ、其葉、桐ニ似テ、小
実かたマリて成ル、亦兵部と云木、
かやニ似て、実も同し、何れも
油ニしめる物之由、未不見処
故記置、夜同宿能州輪島
膳椀売人アリ、我問ふ、輪島
より出ル処之膳椀類、年ニ
如何程金と尋し処、彼答ルニ、 |