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26.田中脩道に与ふる書
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亦其の前説の非なるを言ふと云ふ。六月七日記。


 二六、注釈1田中脩道に与ふる書
 月日、虎頓首再拝。書を脩道田中注釈2の座前に呈す。注釈3頃者、辱くも注釈4経義堂小稿一巻を示さる。受けて注釈5荘誦し、注釈6開闔すること再に至り、三に至り、猶、注釈7手に釈かず。
 夫(か)の戊辰の変は、二百年来未だて有らざる所にして、我が長岡は禍を受くること最も惨なり。士卒たる者、居室衣服より、以て凡百注釈8資生の具に至るまで、注釈9兵燹に燬かれずんば、則ち注釈10奸民の奪ふ所と為り、注釈11蕩然一空、復、取り用ふる所無し。是の時に当って、人人惟々饑寒を免かれんことを求むるに、之れ暇あらず。少壮有志の士と雖も、或いは気に沮み、業に怠る無きこと能はず。而して老注釈12古稀に垂んとして、独り能く注釈13屹々として経を其の間に窮め、未だ嘗つて少しくもまず。沈潜玩索の余、遂に又其の心得する所を述べて、以てこれを歌詠に発するに至る者此くの如し。程子言はずや。注釈14学ばざる者は老いて衰ふと。虎固より老の老いて衰へず、難に逢つて益々奮ふを観て、其の平生、問学力を得るの厚き、決して注釈15庸流の企及する所に非ざるを知る。
 既にして詳らかに詩中に言ふ所を考ふるに迨(およ)んでは、則ち区区の意、亦未だ疑ひ無き能はざる者あり。雑言第一章に曰く、「集義は真に積善に同じきに堪へ、知言は養気の是れ余慶なり」と。「集義は真に積善に同じきに堪ふ」の一句は、即ち注釈16朱子の所謂、「集義は猶積善と言ふがごとし」の意にして、固より復疑ひを容るべき無し。其の、「知言は注釈17養気の是れ余慶なり」と曰ふは、則ち是れ集義を以て工夫と為し、知言養気を合して以て其の効験と為すなり。夫れ集義の外、別に養気の工夫あるに非ず、養気の工夫は惟々集義のみ。集義功を用ふること既に至れば、行として心に慊らざる無し。則ち此の気自然に中に発生し、注釈18浩然として充塞するなり。然れば則ち集義を以て養気の工夫と為し、養気を以て集義の効験と為すは、乃ち亦当れり。然り而して、遂に知言を併せて以て集義の効験と為すに至っては、則ち大いに虎の聞く所に異なり。
 夫れ学は知行を分つ。知は先たるなり。行は後たるなり。知言は是れ知なり。養気は是れ行なり。而して集義は即ち養気の工夫なり。則ち固より亦行なり。蓋し言を知る者は、注釈19格致功を用ふること既に至り、天下の義理に於て明らかならざる所無きなり。天下の義理に於て明らかならざる所無くして、然る後に行ふ所の事、皆義理に合して、而して心に慊たらざること無きを得べし。行ふ所の事、皆義理に合して、心に慊たらざる無し。斯に浩然の気を養成す。所謂注釈20知言集義養気、其の先後相因るの序此くの如し。是れ則ち孟子本文の旨にして、朱子註解の意なり。即ち虎の聞く所なり。
 今老果して知言を以て集義の効験と為さんか。則ち必ず、行ふ所の事、皆義理に合して、而して心に慊たらざる無くして、然る後に天下の理に於て、自然に明らかならざる所無しと曰はざるを得ず。

注釈

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