今茲
乙卯、十月二日の夜、
江都地、大いに震ひ、
第屋頽破し、火随って起り、死傷数十万あり。余時に書を妻在山中に読み、之を聞いて大息して曰はく、噫、天何ぞ独り未だ本邦を閔まざるや。去歳十一月の地震、惨
七道の三を被ふ。而して今復た此の如し。と。既にして又曰はく、天の独り本邦に閔まざるのみに非ず、蓋し深く恤へて大いに之を懲すなり。
洋警起るや尚し。一世
恬嬉、守禦の術講ぜず、
花
の書を
らして来るに及んで、
陸梁
忌憚無し。而して狼狽
錯愕、之を奈何ともする莫し。情露れ形屈し、遂に
甲寅三月の誓あるに至る。海禁壱たび弛んで、
羅英の諸夷、亦皆来りて、求むる所あり。
駸々乎として
牀の勢を為す。而して世猶ほ安きに狎れ、労を憚って其の図を改むるを欲せず。天其の此の如きを恤む。故に去冬の災あり。以て之を懲らす。夫れ国の国たる、山川土壌のみ。而して今則ち壊覆す。天意知るべし。然り而して一世滔々として、未だ
する所以を知らず。既に
期月に
向んとして、猶ほ且
玩
依然たり。此れ則ち天の恤みを為すこと益々深きなり。是に於いてか、復た
頃日の災あり。以て大いに之を懲らす。蓋し若し今にして改めずと謂はば、将に
諱むべからざる者あらんとす。独り国を
へ地を失ふのみに非ざるなり。是を以て之を観れば、天の本邦を閔む、豈周にして且つ至らざらんやと。終りにして又曰はく、然りと雖も、天能く象を以て人に示す。人の為(しわざ)に代ふる能はず。