掛って疎桐の最下枝に在り
三九、洋書を読む 洋儒物理を窮め 輓近滋々精明なり 剖析(柝)微眇に入り 万象情無し 創意人血を製す 全然天成の若し 洋人、燐酸鉄、砂揮発華、鶏子白、食塩の四品を取って、之を混合し、加ふるに瓦爾華尼電気を以てし、十二小時を経れば、則ち化して血と為る。天成の物と以て異なる無きなり。 神会乃ち斯に至る 造物豈驚く無からんや 昧者は卻(郤)って嫉し 謗議謾りに縦横す 何人か箴石を執って 痛下(つうげ)して心盲を破(は)せん
四〇、丁巳の秋英人の再び満清を侵すを聞き、感じて作あり。 西天雲色哀しみ 陰風腥さきを吹いて来る 忽ち聞く英王沸怒して徒らに已(己)まざるを 一呼して艨艟海を蔽ふて起り 蹴破す鯨(黥)濤十万里 東満清を襲うて勢風靡す 満清昔已に侵を被る 目今又復甚だ危急なり 唇亡びて歯寒しと確論あり 念思此に及んで肝胆慄(慓)く 吁嗟乎天下多少の奇男児 何ぞ長策の明時にゆる莫き 時事に感念し、慨然として作詠す。
四一、冬夜即時 一点の吟灯暗く復明らかなり 宣炉の香燼余清あり 寒窓半夜蕭条の雨 惹起す幽人無限の情
四二、岡田雲洞画山水を贈らる。乃ち其の後に題す。 雲洞山人は画史に非ず 胸中只蔵す百層の雲 山と千里の煙水と 時に素に向って塗抹し来る 景象惨澹として気勃爾たり」 王右丞李将軍 爾来画宗北南に分る 金碧水墨互に功を磨す 神手妙工名多く聞ゆ」 大東斯の技亦日に熾んなり 毫を舐り墨を吮ふ人沸くが如し 我は南我は北謾りに論に誇る 或いは臨し或いは模し媚を競ふ」 誰か思はん山人の画専門に非ず 揮灑卻(郤)って是れ等倫を絶せんとは 竟に庸工をして空しく筆を擲ち 相顧みて瞠然として皆神を失せしむ」 世間の騒客若し吾を疑はば 眼を拭って此の渓山風雪の図を観よ」 磊塊(魄)胸裏の雲山を叙し来る。
四三、雲洞に答ふ