雲を興し雨を行るは神竜に付す 身世を俯仰して一嘆一嗟す。
五八、図書 図書を友と為して楽しみ涯り無し 炉上香は浮ぶ一鼎の茶 興に乗じて吟哦し聊か志を慰む 須ゐず芸苑才華を較ぶるを
五九、壊夷の詔下るを聞き、慨然として咏を為す。 暴悍優柔倶に真を失す 時務を究知するに人無きを恨む 戎に当って進まざるは固より義に非ず 僵屍して哀しむ奚んぞ其れ仁ならん 呉子曰く、敵来って進まざるは、義に逮ぶ無し。僵屍して之を哀しむは、仁に逮ぶ無しと。二白は此に本づく。 勾践羞を忍んで克く国を興し 魏(瑩)戦ひを好んで卻(郤)って民を傷つく 憐む可し久病衰残の客 起って南天を望んで空しく呻す 当時、攘夷論天下に満つ。此の説を持する者、海内其れ幾人かある。
六〇、又 夜郎自大戎の侵すを致す 畢竟憂患は是れ薬箴なり 愚悃将に呈せんとす伯夷()伝 君王方に中興の心あり
六一、又 四方に転運するは舟楫を仰ぐ 殊に西人を恐れて坐ながらにして謀に困しむ 安んぞ艨艟千百隻を得て 常山の蛇勢神州を護らん 議論絶大なり。
六二、癸亥の春、感を書す 時危うして志士憂慮多し 況んや我臥床して殊に情を苦しむるをや 何(いつ)か当に膏肓の厄を脱して 復た邦家の為に兵を講ずるを得べき
六三、癸亥の秋作 洋夷の勢日に熾んに 来り迫る西又東 藩鎮亦跋扈し 山陽腥風起る」 皇威振はず覇図廃し 瓦解土崩害並に至る 姦兇卻(郤)って唱ふ天誅の名 強掠殺を専らにして肯へて忌まず 紫垣の下金城の中 白日縦横たり血骼」 奈何せん鈞軸英に乏しきを 調停一意懐柔を要す 寇賊侮りを生じ益々嘯聚す 固を負ふの虎視邪謀多し」 四海同じく悲しむ禍乱の迫るを 諸公倥偬として食ふに遑無し