神策()誰か当に帷幄の臣たるべき 大刑の鉅猾に加ふるあるに非ずんば 争でか惨禍の丘民に及ぶを除かん 書生の幽憤は徒為のみ 暗涙の深くして頻りなるに堪へず
六九、又 出師已に久しく変将に起らんとす 順逆の辯(辨)踈廟謨に違ふ 聖主若し黎庶の苦を思はば 梟をして天誅を免れしむることを休めよ
七〇、深秋感有り 日光方に見る窓に映じて明らかなるを 忽ち已に滂沱として雨城に満つ 深秋の天気何ぞ頻りに変ずる 一反手の間陰復た晴
七一、蓐に臥す 臥蓐十年又災に値ふ 家貧なるの一事最も哀しむに堪へたり 慈親六十髪将に雪ならんとし 井臼倥偬として病児を養ふ
七二、清夜の吟 天に万古の月あり 我に万古の心あり 清夜高楼の上 欄に憑って聊か襟を開く 天上万古の月 我が万古の心を照らす 神骨蒼涼別に一境を闢く。
七三、寝 寝已に十年 荏として猶未だ除かず 惟々枕衾と親しみ 壱鬱として居諸を送るのみ 衡門人の到る無く 三径久しく荒蕪す 始めて信ず襄陽の句 多病故人疎しと 遠寺疎鐘響き 短(咎)忽ち夕 商飆何ぞ蕭瑟たる 哀鴻聞くに堪へず 久しく膏肓の厄に罹り 未だの群を離れず 孤忠偏へに国を憂ふ 幽憤豈身の為めならんや 消長の機互に換はり 興衰の迹相因る 時勢累卵よりも危く 世態雲よりも変ず 大道人の持する無く 正誠誰に縁ってか存せん 悠々として独り此を念へば 情緒乱れて紛紜たり 義正しく詞厳なり。
七四、又 急景駐むべからず 早く已に西岑に沈む 群鴉警めて宿を求め 々としい疎林に噪ぐ 葉枯れて風声聒しく 露重くして蛩音少れなり 暮色洵に荒涼として 幽人轉た心を傷ましむ