孰(た)れと共にかせん秋夜の長きを
八二、感懐。進退格 世故紛紛として乱れて糸の如し 草茅の弛恤定めて何の時ぞ 歴観す今古興亡の迹 細察す陰陽消長の機 撥反元小智の事に非ず 経綸偏に要す大賢の資 廟堂笏を執る人多少 輔国の重望将に孰にか帰せんとする 抱負軽からず
八三、遇作二首丙寅 紛々たる異説朝野に盈つ 国是何の時か一新を見ん 病身復する無し回天の力 閑居古人を友とするに若かず 平昔の持論深く自ら信ず 只期す来哲公評有るを 更闌けて灯下香を焚いて坐せば 一片の霊台氷雪清し 身分絶高。
八四、十年 十年病に臥して僅かに支持す 憂国の丹心猶未だ衰へず 顕達功を立つる意無きに匪ず 隠居志を求めて且(しばら)く時に随ふ 一生の毀譽我何ぞ管せん 万古の是非天自ら知る 卻(郤)って愍む世間才俊の士 利名場裡酔うて癡の如きを
八五、 雑感二首 官海の風波太だ険危 茅茹卻(郤)って是れ私を営むに在り 深く知る浮利浮名の毒 多少の才人酔うて癡の如し 官に居る者の頂門の一針。 一言解し難し衆人の惑ひを 多口能く銷す達者の論 世路の険危渉り易きにあらず 且く得失を将(も)って芳に付す
八六、世運 世運の変遷知る幾回ぞ 今古を静思すれば感頻りに催す 此の間最も是れ驚く可き事 洋舶西南より米を送って来る
八七、病臥 高楼に病臥す風雪の時 熟々(つらつら)世事を観て転(うた)た悲しみに堪へたり 財空しく兵弱く国何ぞ立たん