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小林虎三郎 求志洞遺稿について 凡例 このサイトの見方
求志洞遺稿詩坤
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88.冬晩感を書す/89.冬日偶作/90.憾み有り/91.秋山某を送る/92.陰雲
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信失し刑(みだり)にして民漸く離る 坐ながら敗亡を待つ誰が又願はん 務めて興復を謀る未だ遅しと為さず 注釈1閑憂訴へんと欲して媒介無し 付与す一篇の注釈2艱渋の詩に
 時に感じて注釈3事を撫す(執る)、感慨に堪へず。

 八八、冬晩感を書す

兵禍未だ全く息まず 注釈1荒患又相追ふ 穀価利々注釈2騰踊し 世態転た険危なり 注釈3伊れ余既に災に罹り 忽ち又此の時に遭ふ 貧且つ病なりと曰ふと雖も 幸ひに猶自ら支ふるを得 茅屋吾が膝を容れ 注釈4袍吾が肌を掩ふ 銭無くして酒を注釈5るに難けれども 米ありて飢を防ぐに足る 世禄の士に非ざるよりは 安くんぞ能く斯くの若きを得ん 乃ち知る君恩の大なるを 江海も与に比する莫し 独り彼の注釈6窮氓を憐む 注釈7晨夕僅に注釈8糜を嘗む 注釈9衣を典して以て食を買ふも 寒を禦ぐの資無きをいかにせん 子を生んで挙ぐるを得ず 夫妻或いは相離る 注釈10賑政未だ至るを望まず 戸戸泣き且つ悲しむ

 八九、冬日偶作

病来殊に寒を怯(おそ)る 注釈1矧はんや斯の風雪の時をや 被を擁して頻りに首を縮む 恰も注釈2蔵六(大)の亀の如し 家人時に相呼ぶも 往々聞知せず

 九〇、憾み有り

注釈1鍾(鐘)山注釈2成を秉る日 注釈3)水卻(郤)って遷に在り 注釈4江陵国に当る時 注釈5注釈6沈淪す 貧賤にして交はり太だ厚く 注釈7顕達にして忽ち相分る 人情洵に変り易く 転た注釈8行路の難きを覚ゆ
 深く世を注釈9閲る者の言なり。

 九一、注釈1秋山某を送る。某年少にして才学あり、奸臣の為に忌まれ、遂に微罪を以て逐はる。

才子注釈2郷関を辞す 首を回らして歩み遅遅たり 注釈3密雪注釈4人蹤を没し 寒風注釈5客衣に透る 注釈6固より宜しく省みるべく 注釈7流離未だ悲しむに足らず 注釈8窮阨の地に処るに非ずんば 悪んぞ注釈9磨礪の資を得ん 注釈10武昌には旧と曾つて遊び 注釈11名彦半ば相知る 注釈12盍簪倶に講習せば 成業自ら期すべし 狐は死して正に注釈13丘首す 君豈帰るを思はざらんや 何の日か高楼の上 再び注釈14酒巵を勧むるを得ん

 九二、注釈1陰雲

陰雲天日を蔽ひ 白昼尚ほ注釈2冥濛たり 注釈3狂飆枯樹を摧き 乱雪青松を撲つ 狐狸方に勢を得 注釈4鴟梟亦空を翔る 群禽怖れて声無く 形を蔵す密林の中 連旬或いは此くの如くんば 万類荳窮する無からんや 霽を開く未だ期あらず 唯注釈5造化の功を待つのみ

注釈

87.病臥 88.冬晩感を書す 89.冬日偶作 90.憾み有り 91.秋山某を送る 92.陰雲
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