一一九、大参藩事を拝して後の作庚午 多年病に臥す老書生 誰か料らんや一朝寵栄を蒙らんとは 門前縦ひ是れ人市(ひといち)の如きも 旧に依って此の心秋水清し 安石山を出づ。
一二〇、晩春偶作 東郊に向って痩()試みるに慵し 堂を下って且く渉(わた)る小園の中 飽くまで災患を歴て猶死せず 今春復また見る百花の紅なるを
一二一、按察府(あんさつふ)に抵って、糶を乞ひて成らず、還って乃ち賦す。 饑を阻む牒()訴日に紛紛たり 此際官と為る太だ苦辛 道程糶を乞ひ成らずして返る 疑ふらくは是れ前身は南霽雲なりしかと 乱後経済最も艱辛を覚ゆ。
一二二、初秋懐ひを書す 青雲久しく望みを断ち 官と為る栄えとする所に非ず 庁に上って群を督し に入って諸生を訓ふ 踈拙事を補ふ無く 病羸徒らに情を苦しむ 願はくは言(ここ)に世覊を謝し 悠然として茅衡に臥さん
一二三、又 大火初めて西に流れ 風声漸く已に秋なり 涼月幽襟を照らし 鳴虫閑憂に伴ふ 便侫人悉く慕ひ 脩衆の仇とする所 塵区洵に厭ふ可し 赤松に従って遊ばんと欲す
一二四、又 削平功纔かに成り 荒歉禍ひ未だ休まず 兵余姦偽多く 習卻(郤)って苟 内憂既に此くの如く 外侮又日に稠し 世態水よりも険なり 何人か是れ舟楫なる 早霖の舟楫、作用も亦多し。
一二五、擣衣に題す 砧杵未だ労を辞せず 偏へに驚く風露の寒きを 良人千里の外 応に客衣の単なるを怯るべし
一二六、陶淵明の菊を栽うる図に題す 寄奴の勢日に滋々熾んなり 典午の余灰誰か又吹かん 環堵猶ほ憂ふ蚕食を被るを 籬辺種うることを為す霜に傲るの枝
一二七、異言