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稿本略註国訳求志洞遺稿 文 乾 稿本略註国訳求志洞遺稿 詩 坤全
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1.隠憂の賦
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注釈1求志洞遺稿文乾
     越後 小林虎 炳文 著
  一、注釈2隠憂の賦
 陰陽の注釈3繆戻に注釈4属ひ、注釈5疾に罹(かか)り、注釈6衆工の秘薬を餌(じ)し、注釈7甘温に範(のり)して調摂すれども、秋再び閲(けみ)して未だ除かず、空堂に託して潜(せん)蟄す。注釈8時序の衰替に値(あ)ひ、注釈9愁緒の紆結を増す。百草の注釈10彫忰を注釈11睨ひ、落木の注釈12繽紛を瞰(み)、注釈13注釈14蕭瑟を聴き、繁霜の注釈15凄寒に触れ、心注釈16凛々として其れ注釈17ゐきし、意惨々として其れ注釈18労煩す。永嘆を注釈19而今に発し、追感を昔年に致す。始め余の注釈20斯文を学ぶや、注釈21束髪の注釈22弱歯に于(お)いてす。注釈23墳典を誦して注釈24服膺し、注釈25趨嚮の正軌(せいき)を識(し)る。年既に注釈26冠字を踰え、乃ち注釈27志を抗(あ)げて奮起し、明師に循(したが)って注釈28遨遊し、誘誨(いうくわい)の注釈29醇美を奉じ、注釈30洙泗の注釈31裔流を溯(さかのぼ)り、注釈32注釈33名理を窺ひ、注釈34九流の注釈35緒論に渉(わた)り、百代の文史を閲(けみ)し、注釈36泰西の記籍に(およ)び、宇宙の全体を知り、注釈37慨し憤しして激昂(げつかう)し、余が陋(ろう)を忘れて思はず。将(まさ)に以て弥々強(いよいよつと)めて逾々勤(いよいよつと)め、注釈38前脩の注釈39鴻儀を追ひ、道徳の蘊奥(うんあう)を窮め、注釈40術芸の注釈41指帰を探(さぐ)り、注釈42体用を通じて以て壱と為し、文武を合して岐(わか)たず、吾が徳を注釈43邃厚に養ひ、吾が材を注釈44瑰奇に造(いた)し、注釈45廟謨を賛(たす)け、注釈46典礼の闕遺(けつゐ)を補ひ、注釈47峨々の注釈48校を興し、注釈49済々の多士を育て、注釈50戎政を修めて振作(しんさく)し、注釈51猖獗の醜夷(しうい)を膺(う)たんとす。何ぞ天道の淑(よ)からざる。忽(たちま)ち注釈52して咎(とがめ)に遘(あ)ひ、還余故山(またよこざん)に反(かへ)る。注釈53衡門の陋幽に棲み、漁者に雑って侶(りよ)と為(な)り、樵夫に混って注釈54と為る。厳諭に明師に違(たが)ひ、注釈55論を良友に絶ち、注釈56曾ち志の釈(と)くる靡(な)きに惑ふ。胡(なん)ぞ学の能く修まるを問はん。歳注釈57冉として其れ疾急なること、注釈58隙駒の方(まさ)に走るが若し。注釈59として既に吾れ注釈60壮(状)齢に躋(のぼ)れり。注釈61旧巣に拠って孤守す。独り憂(うれへ)を湛(たた)へて深く懐へば、思ひ注釈62乱して注釈63紛紜たり。余の注釈64困阨其れ曷(な)んぞ傷(や)まん。進取の注釈65辰に後るるを悲しみ、皇恩の未だ(むく)いざるを慙ぢ、注釈66素志の伸ぶる莫きを恫(いた)む。斯の恨を抱いて注釈67窮処すれば、夢寐(むび)と雖も亦焉(いづく)んぞ安んぜん。人生の久しからざるを注釈68惟ひ、注釈69遅暮の将に至らんとするを注釈70り、世を没して聞ゆる無きを痛む。憤(いきどほ)りを発して以て志を騁(は)せんと欲すれども、疾(やまひ)、注釈71纏(纒)綿して固く結び、形、注釈72枯槁して注釈73す。奚(なん)ぞ注釈74密勿を之れ得べけん。徒らに益々注釈75軫み滋々(ますます)注釈76悸れ、注釈77耿として中夜に眠られず、灯光の注釈78に対す。注釈79旻天を仰いで大息すれば、涙注釈80瀾として以て雨集し、中、注釈81灼爍として其れ禁ずる莫し。孰(たれ)(敦)か注釈82云に、余の注釈83憂悒を察せんや。注釈84古桐を撫(ぶ)して、念(おもひ)を弛(の)ぶれば、声注釈85紛錯して注釈86協はず。
  象山先生曰はく、「注釈87儘く佳なり。」と。

注釈

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