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小林虎三郎 求志洞遺稿について 凡例 このサイトの見方
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2.興学私議
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今令を諸侯に下して、其の注釈113世子及び子弟、年七八歳に至れば、之に教ふること小学の制の如くす。既に長ずるに及べば、注釈114外諸侯の国、大にして士衆く、能く自ら教師を備ふる者は、固(もと)より其の自ら之を学ぶに任す。其の国小にして士寡(すくな)く、自ら教師を備ふる能はざる者は、乃ち三学に入るを許す。夫の内諸侯の若きは、則ち皆三学に入らしむ。
 夫れ是の如くして、然る後に諸侯も亦皆学ばざる莫し。是に於て上下の差、長幼の等を視、考試の法、賞罰褒貶の制、以て其の勤を勧め、其の惰を懲らせば、則ち上(かみ)諸侯大夫より、下(しも)士庶人に至るまで、皆学に進まざるを得ず。所謂教養を広めて以て人材を育すとは是なり。
 何をか官制を修めて任使を専らにすと謂ふ。夫れ上下の人皆学に進まざるを得ず。其の制此の如し。而して之を行ふこと十年ならば、今の幼き者は注釈115少く、少き者は壮に、注釈116壮なる者は注釈117強にして、各々其の性の宜しき所に随って、成る所あらん。而して、夫(か)の出でて彼((外国))に学ぶ者、又稍々帰り来らん。則ち人材の用ふべき者、注釈118洪繊高下、注釈119彬々として出でん。是に於て、其の長ずる所を料って、之に授くるに職を以てすれば、則ち文武百官、学ばざる有ることなし。其の職皆実と為り、而して学乃ち上にあり。
 然るに今の官制は苟簡注釈120草略にして、殊に条理を闕く。執政と参政と、其の員多しと雖も而も主掌なし。但(ただ)皆一人の注釈121度支を掌(つかさど)るあるのみ。其の他の諸官は、或は事重くして位卑く、或は係聯宜しきを失ひ、或は分合当(あた)らず、事に於て甚だ便ならず。則ち人材ありと雖も、未だ其の用を尽くすを得ざるを恐る。
 夫れ官を設け職を分つ、法の最も古き者は、注釈122虞書載する所是のみ。其の詳は聞ゆる無しと雖も、其の大意の若きは、固より以て万世の注釈123模楷と為すに足る。周公注釈124六官を分つに、注釈125虞廷の法に因って、損益修飾し、損益精細を極む。而して唐の注釈126六典之に因る。中国古昔の制、又唐に傚(なら)って而して、全くは襲(おそ)はず。此(これ)皆官制の極めて条理ある者なり。
 今の執政は周の六卿の若(ごと)く、参政は其の副官の若し。而して主掌なきは則ち異なり。宜しく虞廷の法に原(もとず)き、周唐及び中国古昔の制を考へ、参する宋元明清及び外蕃の為す所を以てし、執政と参政とをして、礼楽兵制食貨百工の事を分掌せしめ、其の他の諸官は位の注釈127崇卑、事の軽重に称(かな)ひ、係聯宜しきに適(かな)ひ、分合当を得、而して又官職令を撰び、詳かに其の掌る所を録し、これを百官に頒つべし。然る後は等級分明にして、職司注釈128らず、百官皆其の当に力を注釈129竭すべき所を知る。
 然るに今の人を使ふや、其の材の長ずる所を料って、其の任を専らにせず。今年大匠と為り、明年司農と為る。又明年注釈130江都の尹と為る。官を遷すこと注釈131伝舎の若く然り。夫れ材は必ずしも兼ね長ぜずして、学は悉く綜(す)べ難きを患(うれ)ふ。故に唐虞の際、皐陶稷契(こうえうしよくせつ)の賢、投ずる所として可ならざる無きが若(ごと)き者を以ても、猶一官に始終す。皐陶は未だ嘗て后稷(こうしよく)に遷らず。稷は未だ嘗て司徒に遷らず。契(せつ)は未だ嘗て士に遷らず。使任の法固より当に是の如くなるべし。然り而して今官を遷す毎に、掌る所の事、必ず其の科を変ず。則ち官制修ると雖も、人材も亦未だ其の用を尽くすを得ざるを恐る。宜しく文武百官をして、皆其の任を久しくせしむべし。其の官を遷すに及んでは、初め兵科を以て進む者は、乃ち兵官に遷し、工科を以て進む者は、乃ち工官に遷す。

注釈

113-122 123-131
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