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12.民間禁令の序
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趙鞅を譏るの言を観て、輙ち刑の軽重は人をして知らしむべからずと謂ふ。鳴呼是の説や、吾之を刑の賊なりと謂ふ。
 注釈16三代以降、刑律の書、唐に至って注釈17較々備はる。明は唐に因って其の体製を変ず。軽重の際、亦同じからず。清又明に因り、損益する所甚寡し。此れ皆天下に頒布する者なり。
 本朝大宝の律、唐に因って全くは襲はず。蓋し頗る注釈18詳該と為す。惜しい哉、其の後に伝はる者、闕して完からず。徳川氏政を為すこと殆ど三百年。今日の文明は実に其の啓く所なり。然れども百条の律、既に粗略に失し、又未だ始より頒布せず。注釈19明の太祖の所謂法は有司に在って、民周知せざる者、斯れより甚しと為す莫し。
 皇室中興し、遽かに其の後を承け、新律を編するに方りて未だ成らず。注釈20己巳の十一月、虎謬って乏しきを注釈21藩職に承け、注釈22権りに刑法を管す。民の知らずして刑に注釈23麗く者多きを注釈24矜み、則ち自ら固陋を注釈25揣らず、唐以下の諸律を注釈26歴考し民間禁令一巻を著はし、く管内に頒ち、遂に周代読法の制に傚ひ、有司をして毎歳の注釈27初里(初)正を注釈28属めて、合(まさ)に教令授読すべからしむ。里正又各々毎月朔其の民を属めて習誦し、夫の人をして法禁の在る所を知るを得て、以て新律の出づるを竢たしむ。有志及び里正、果して能く此の意を体して、奉行して懈らずんば、則ち前賢の教を弼け中に協ふの効、固(まこと)に庶幾ひ易きにあらずと雖も、近代罟を設けて之を取るの弊、亦或いは以て注釈29釐革するを得て、聖朝仁を以て民を養ふの意に於いて、未だ必ずしも小補無くんばあらずと云ふ。
 明治三年歳庚午に在る春正月某日。長岡藩大参事小林虎序。

 余聞く。「西洋各国法律の書は、至って詳、至って悉、而して独り彫刻して頒布するのみにあらず、又以て斉民必学の科と為す。故に斉民皆法律の概を知らざるなく、注釈30訟獄自ら寡なし。其の或いは之有らば、有司先づ審かに其の情を訊ね、然る後に判して曰く、汝が訟ふる所、律の某条に合せず。故に曲に属す。汝が犯す所、律の某条に当る。故に処するに某刑を以てすと。訟ふる者犯す者、皆復辞を措く所なし。甘心して罪に服す」と。鳴呼、是れ豈周人刑を布き法を読むの意に同じうして、能く其の精を極むる者に非ずや。
 方今国家の務は、宇内の至善を択んで、注釈31経邦の大典を定むるに在れば、則ち西洋法律の書の若きは、有志の士に於て、宜しく注釈32参覈すべき所と為すは、固より論を待たざるなり。但々余、疾益々痼に、神益々注釈33耗し、蟹文の籍を繙かんと欲するも、得べからず。僅に一二邦人訳す所の者に就いて、其の一斑を窺ふのみ。悪んぞ以て其の要を摘して、之を述ぶるに足らんや。天下の大、固より傑俊の士に乏しからず、必ず当に能く其の全豹を見、訳して之を出して、以て東方の未だ備らざる所を補ふ者有るべし。余則ち注釈34刮目して以て待つ。
注釈35庚午の秋、九月某日。虎 記。

注釈

12.民間禁令の序16-25 12.民間禁令の序26-35
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