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17.源筑州画像の記/18.忘機草廬の記
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 三年九月、文廟疾篤し。公を召して曰く、注釈29孤即ち起たずんば、宜しく誰をか立つべき。注釈30鍋松を立てんか。注釈31尾州を立てんか。抑も尾州をして位を摂して以て鍋松の長ずるを竢たんかと。公対へて曰く、古は注釈32遺腹を植てて委裘に朝す。今世子生れて已(巳)に四年。之を立つる奚んぞ疑はん。若し夫れ尾公を立つると、其をして位を摂せしむるとは、皆乱の端なりと。文廟曰く、然り。若し鍋松にして注釈33諱むべからざらば、奈何と。公又対へて曰く、尾公宜しく立つべし。注釈34神祖の明訓在り。誰か敢へて喙を容れんと。文廟意乃ち決す。注釈35章廟注釈36繦褓にして朝に臨み、天下動かず。鳴呼文廟世を憂ふるの誠、人を知るの明、後世注釈37罕に覯る所にして、公の大事を弁じ、大議を決するは、乃ち以て殊遇にゆるに足る。君臣の際一に何ぞ盛なるや。
 今、注釈38海禁既に撤し、注釈39四夷注釈40環至し、敢へて無礼を行ひ、注釈41邀求して止まず。而して之を能く制する莫く、注釈42連りに大喪あり。幼主位に立ち、人情疑懼す。余嘗て、外国事務の諸有司、率ね皆注釈43常套に拘泥し、肯へて身を致して事に従はず、々機会を失し、殆ど国を誤るに至る。而して諸侯の継嗣を議する、唯己の意をのみ是れ張り、理と勢とを審らかにせず。徒(ただ)に益無きのみにあらず、将に乱を天下に扇(あふ)らんとするを嘆く。公の二事を観るに及んで、乃ち敵を注釈44樽俎の間に威し、危疑を片言に定むるは必ず雄才大節公の如き者にして、然る後、此に与るを得るを知る。夫の注釈45趦注釈46齷齪として、妄りに私見を主とする者の能く及ぶ所に非るなり。
 余嘗謂へらく、古の所謂大夫なる者、公は乃ち其の人なりと。豈然るに非らんや。
 某生蔵する所の公の画像、誰の作たるを知る莫し。然れども其の眉目生けるが如く、衣冠注釈47矩に中り、注釈48精采奕々として人に逼(せま)る。決して凡手に出づるにあらず。余展べて焉を拝するに、注釈49悚然として公に謁するの想あり。因って公に観て今に感ずる者を以て、之を其の後に書し、亦区々たる注釈50希慕の意を寓するのみ。


 一八、注釈1忘機草廬の記
 妻在の山に、医を以て隠るる者あり。姓は丸山、字は楚香、其の居る所の草廬、名づけて忘機と曰ふ。客曰く、異なるかな、楚香の其の廬に名づくるや。夫れ医は猶兵のごときなり。兵を用ふる其の注釈2機を得ずんば、器利なりと雖も、卒、練なりと雖も、其の勝を制すること能はず。医となりて其の機を得ずんば、薬良なりと雖も、剤適すと雖も、其の功を奏する能はず。故に兵を用ふと医と為ると、皆惟々機の注釈3研ならざるをのみ是れ患ふ。而して之を忘るる、可ならんや。異なるかな、楚香の其の廬に名づくるやと。
 注釈4雙松子曰く、子の云ふ所は、機の正なる者なり。而して固より楚香の研ならんと欲する所なり。其の忘れんと欲する所は、蓋し特に機の俗なる者のみ。子も亦今世の医たる者を見ずや。其の居を美にし、其の服を麗にし、以て庸人の目を驚かす。其の言を巧みにし、其の注釈5色を令くし、以て児女の心を悦ばす。其の好む所に投じ、其の忌む所を避け、注釈6虚喝して以て之を畏れしめ、甘語して以て之を引く。罪を前医に帰して以て己の長を注釈7し、変を陰陽に委ねて以て己の短を蔽ひ、疾の険悪なる者は、注釈8仮託推辞して、これを他医に貽(おく)り、以て己の責を免る。

注釈

17.源筑州画像の記29-39 17.源筑州画像の記40-50 18.忘機草廬の記1-8
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