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20.恥の説/21.師の説
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彼は能く民を愛し注釈8力を弛ぶ。我は則ち未だ能はず。彼は能く国を富まし兵を強くす。我は則ち未だ能はず。苟くも勢を貪り権を弄し、注釈9得を知って失を忘るるの人に非ずんば、則ち孰か能く恥莫からん。夫れ既に已に之を恥づれば、則ち又豈注釈10因循注釈11して、頽廃に安んぜんや。必ず注釈12握髮吐哺して、以て経営の術を尽し、注釈13積累の弊を除かんと欲するなり。夫れ然る後に国治まり天下平らかなる、其れ庶幾からんか。
 夫れ是の如し。故に恥づる所愈々遠ければ、則ち詣(いた)る所愈々深し。恥づる所愈々大なれば、則ち就(な)る所愈々宏し。注釈14古の人顔淵なる者あり。毎に其の徳の舜に如かざるを恥づ。而して之に及ばん所以を思ふ。曰く、舜何人ぞや、予何人ぞや。為すある者も亦是の如しと。顔淵の恥、此の如く其れ遠し。故に不幸にして短命にして死すと雖も、其の注釈15造詣する所は、則ち殆ど聖域に入る。注釈16游夏よりして下、皆以て及ぶべからずと為し、後世の学者、景仰せざる莫し。注釈17古の人伊尹なる者あり。毎に其の君の尭舜に如かず、其の民の尭舜の民に如かざるを恥ぢて、而して天下の民、匹夫匹婦も尭舜の沢を被らざるあるを思ふこと、己推して之を溝中に内るるが若し。伊尹の恥、此の如く其れ大なり。故能く注釈18成湯を佑けて、民を塗炭に救ひ、以て注釈19商家の業を啓く。後世の注釈20宰輔、注釈21儀刑せざるなし。是に由って之を観れば、大賢の資と雖も猶恥づる所有るに待って、然る後能く其の注釈22徳勲を成す。然らば則ち天下何人か一日として恥無かるべけんや。
 聖学明らかならざるより、士の己を修め、国の人を治むる、皆其の道を失ひ、身儒服を衣、口聖経を誦して、而して勢に就き権に倚りて恥を知らざる者有り。昂然として士大夫と称して、利に趨き害を避け、注釈23隷の敢へてせざる所を為して、恥を知らざる者有り。注釈24剽掠して注釈25攘ふ能はず、国威日に挫けて振ふ能はずして恥を知らざる者有り。枢要の職に居って以て安佚の地と為して、恥を知らざる者有り。此(ここ)にして恥ぢず、況んや其の他をや。然り而して世亦狎れて而して察せず、之を或いは咎むる莫し。又悪んぞ其の古昔の賢哲の為す所を観て、概然として興起する者有るを望まんや。悲しいかな。恥の説を作る。
 注釈26壬子の夏


 二一、師の説
 注釈1師は以て道を明らかにす。古人焉を重んず。注釈2欒成曰く、「注釈3民三に生(い)く。之に事ふること一の如し。父之を生み、師之を教へ、君之を食(やしな)ふ。父に非ざれば生れず。食(しょく)に非ざれば長ぜず。教に非ざれば知らず。生の族なり。故に一もて之に事へ、唯其の在る所は、則ち死を致すなり。」と。
 今の師に事ふる者は、何ぞ其れ軽きや。注釈4質を委して弟子と為り、久しうして厭へば、則ち去って他に之く。曰く、「吾が旧師は、学術是の如く其れ明らかならざるなり。躬行是の如く其れ脩まらざるなり。吾の之に注釈5倍く亦宜ならずや。」と。既にして又厭へば則ち又去って他に之く。曰く、「吾が旧師は、学術是の如く其れ明らかならざるなり。躬行是の如く其れ脩まらざるなり。吾の之に倍く亦宜ならずや。」と。

注釈

20.恥の説8-16 20.恥の説17-26 21.師の説
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