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21.師の説/22.方灯の説/23.馬基頓の二英主の伝
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此に人あり。出でて而して一邦に仕へ、合はずして去り、又一邦に仕へ、則ち曰く、「吾が旧君心を存することの正しからざること是の如し。政治挙らざること是の如し。吾安んぞ得て去らざらんや。」と。又合はずして去り、又一邦に仕へ、則ち曰く、「吾が旧君心を存することの正しからざること是の如し。政治挙らざること是の如し。吾安んぞ得て去らざらんや。」と。是れ則ち孰か賎しんで而して之を悪まざらん。今の師に事ふる者、何を以て是に異ならん。然り而して世皆注釈6恬然として怪まず。一もて之に事ふるの義を知らず。吾甚だ焉を慨き、師の説を作る。
 安政改元の冬。


 二二、注釈1方灯の説
 吾が家に一方灯あり。常に比すれば太だ高し。其の太だ高きを以て提携に便ならず。是(ここ)を以て廃して用ひず。
 甲寅の春、余罪を獲て帰り、閉居して書を読む。灯太だ卑く、火光斜に射し、注釈2几上を直照する能はず。余則ち注釈3慊焉たり。
 一日偶々此の灯を見、其の塵埃を払ひ、其の注釈4垢穢を剔り、之に貼るに新紙を以てし、之に置くに注釈5新盞を以てし、夜々之を用ふれば、則ち、火光直射し、書字分明にして、嚮の慊(あきたら)ざる所以の者、注釈6渙然として氷釈せり。余是に於て注釈7然として笑って曰く、此の灯や、塵中に廃棄埋没せられ、注釈8炊烹沐浴の具に伍せんことを求むるも、得べからざる者、既に十余年なり。今幸に余に遇ひて、図書筆硯の間に参するを得たり。亦奇ならずや。
 既にして又注釈9喟然として嘆じて曰く、物の太だ大に、太だ長にして、遽に用に適せざること此の灯の若き者、蓋し亦尠きに注釈10匪ざらん。然り而して、此の灯の余に遇ふ若き者を求むるも、其れ亦多く得べけんや。是れ則ち悲しむべきのみ。方灯の説を作る。


 二三、馬基頓の二英主の伝  荷蘭、維尼氏の万国小史の抄訳
 馬基頓(マセドニー)王非立(ヒリツプス)第二なる者は、亜明大(アミンダス)の子なり。馬基頓(マセドニー)は希臘(ギリシヤ)十二国の一となす。始め王有りと雖も、微弱にして競はず。紀元前五百十三年より四百七十九年に至るまで、波斯(ペルシヤ)の注釈1藩属たり。後も亦猶自立するを得ず。非立(ヒリツプス)出づるに及んで、国始めて興る。
 非立(ヒリツプス)人となり、深沈果敢にして権略あり。其の猶少なるや、国嗣定まらず、注釈2詬争紛然たり。地品彼罷比大(テペペロピダス)来って判決を為し、遂に非立(ヒリツプス)を拉して帰り、以て質(ち)と為し、之を埃巴米嫩大(エパミノンダス)の家に養ふ。埃巴米嫩大(エパミノンダス)は兵に精しき者なり。非立(ヒリツプス)因って焉に学ぶ。発憤鑽研し、其の薀奥を窮む。才智大いに進む。異日能く本国の衰替を拯ひ、一方に雄視し、以て嗣子の大業を開きし者、蓋し此に根ざすと云ふ。
 既にして国に帰り、王位に登る。実に三百六十年なり。内、政事を修め、外、兵威を張り、四隣の敵国、皆注釈3屏息して敢へて動かず。

注釈

21.師の説 22.方灯の説 23.馬基頓の二英主の伝1-3
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