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25.柳士健に与ふる第二書
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但々諭す所の説、注釈4区々の意、未だ以て然りと為す能はざる者は、則ち又敢へて布陳すること左の如し。以て再教を待つ。
 来書に云ふ。「但々疑ふらくは、初めに復るの字の如きは、自ら当に知行を兼ねて言ふべし。当に専ら行を以て言ふべからずと。請ふ、其の証を挙げん。注釈5小学の題辞に云ふ。『徳崇く業広くして、乃ち其の初に復る。』と。上の句は内外を以て言ひ、而して『乃ち其の初に復る。』とは、豈専ら行を以て言ふと為すべけんや。」と。
 初めに復るの字、随所同じからず。対言する所あれば、則ち専ら行を以て言ふ。注釈6学而の章の註に云ふ所の若き是なり。対言する所無くんば、則ち知行を兼ねて言ふ者あり。注釈7大学の首章の註に云ふ所の若き是なり。行を主として言ひて、知其の中に在る者あり。此の云ふ所の若き、是なり。
 来書に又云ふ。「注釈8大学の序に言ふ、『之を教へて以て其の性に復せしむ。』即ち、其の初めに復するの謂ひなり。も亦当に知行を兼ねて説くべし。当に専ら行を以て言ふべからず。」と。
 亦行を主として言ひ、知其の中に在り。「大学の序に言ふ。」の下、当に「之をして治めて而して。」(使之治而)の四字を足すべし。下文大学の首章の註を引くは、此に放(なら)ふ。
 来書に又云ふ。「大学の首章の註の、『遂に之を明らかにして以て其の初めに復す。』は諸家皆言ふ、明の字は注釈9格致誠正脩を包ぬ。未だ嘗て其の初めに復するを以て行と為さずと。且、諸家の説の如きは、善を明らかにするの字は、知を以て言ひ、初めに復するの字は行を以て言ふ。果たして然らば、則ち誠正脩独り其の初めに復すと為すのみ。格致のみ独り其の初めに復せざらんや。」と。
 「之を明らかにす。」とは固より知行を兼ねて、其の工夫を言ふなり。「其の初めに復す。」も亦知行を兼ねて、其の注釈10極功を語るなり。虎の見る所と雖も、亦老兄の言ふ所に異ならず。但々此(ここ)に云ふ所と、学而章の註に云ふ所とは、固より自ら同じからず。未だ此を以て彼に例すべからざるなり。何となれば則ち注釈11彼に云ふ所と、大学の序に云ふ所の「其の性の有る所を知りて、而して之を全くす。」とは、字は則ち異なりと雖も、義理文勢は皆同じ。而して倶に一「而」の字を下して以て知行を別つ。此(ここ)に云ふ所の若くんば、則ち知行混説す。上に其の工夫を言ひ、下に其の極功を語る。中間、一「以」の字を下して、以て上下を貫く。是れ其の同じからざる所以なり。「注釈12未だ嘗」の字の下、当に「独」の如き字を加ふべく、「格致」の下の「独」の字、当に「乃」の字を作るべし。
 来書に又云ふ。「窃に疑ふ。論語の註中注釈13明善と云ふ者は、猶、明徳を明らかにするを之れ謂ふが如(ごと)しと。明善の善の字、上文、人性は皆善なりの善の字より来る。明の字は覚るに先後ありの字より来る。明善の字は中庸の明善の字と、字偶々同じくして、義は則ち同じからず。且、覚るの字は既に知行を兼ねて説く、則ち明の字も亦当に知行を兼ねて説くべきに似たり。蓋し、明徳を明らかにするの明、明善の明、皆学の功を用ふる処にして、知行を兼ねて言ふ。其の初めに復するは、学の極功の処にして、亦当に知行を兼ねて言ふべし」と。

注釈

25.柳士健に与ふる第二書4-9 25.柳士健に与ふる第二書10-13
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