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53.翻刋徳国学校論略の序
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明治六年、一月一日。越後の小林 虎、炳文、東京神田の注釈10僑居に識す。
 通編、叙事中、往々議論を挿み、多く前輩の成説を述べ、間々又一二の臆見を附す。一一注釈11標別せず、注釈12簡省に従ふのみ。
 虎又識す。


 五三、注釈1飜刋徳国学校論略の序
 地民を生じ、民聚りて一大団を為す。是を国民と謂ふ。乃ち国の体なり。故に民強ければ則ち国強く、民弱ければ則ち国弱し。国の強弱は民の強弱に係る。何をか民の強と謂ひ、何をか民の弱と謂ふ。其の能く学を励み業を勉め、勇あって注釈2方を知る者、之を強と謂ふ。其の能く然らざる者は、則ち弱なるのみ。民にして果して能く学を励み業を勉め、勇あって方を知る。其の数、寡と雖も国以て強たるを得。若し能く然らずんば、則ち其の数多しと雖も、国、弱を免かれず。
 支那は人口且に四億ならんとす。宇内の民を三分して、其の一を有つ。これを欧米の注釈3生歯に較ぶるに、注釈4翅に注釈5のみならず。然り而して支那の注釈6(蕭)して振はず、毎に外侮に苦しむこと彼の如く、欧米各国の注釈7虎嘯竜驤、威を注釈8八溟に展ぶること彼の如き者は、豈他あらんや。惟々欧米各国の民、率ね皆能く学を励み業を勉め、勇あって方を知り、支那の民は、則ち然る能はざるに由るのみ。
 夫れ支那の民、欧米各国の民と、種族同じからずと雖も、其の万物の霊たるは、則ち一なるを以て、而して強弱の注釈9天淵懸絶此くの如き者は、抑も何ぞや。亦惟々欧米各国、民を教ふるの具と其の法と、備はり且つ悉くさざる莫くして、支那は則ち然る能はざるに由るのみ。然れば則ち今の時に方りて其の民を注釈10啓迪し、弱を変じて強と為し、以て其の国を強うせんと欲する者は、欧米各国の為す所に傚はずして、又何(いつ)の所にか求めん。
 注釈11者、文部の学制を定むる、其の課目次第、皆多く彼に取るは正に此れを以てのみ。顧ふに彼の各国、民を教ふるの具、皆同じからざる靡しと雖も、其の法に至っては則ち未だ小異なしとせず。蓋し国風民俗、彼此一に匪ず、勢宜しく然るべきなり。而して今我れ之に傚はんと欲す。学、官私を論ぜず、科、高下に拘らず、凡そ教育を以て職と為す者、苟くも、彼の各国学務の書を取りて、一一参照し、其の同異を詳らかにし、其の我の今日に適する者を択んで、之を用ふるに非ずんば、悪くんぞ其の施す所の可に当り、以て其の功を奏するを得んや。
 彼の学務の書、訳刋を経る者、和蘭学制あり。今仏国学制、亦方に出づ。而して徳国学校論略、又復、注釈12舶齎せらる。徳国は即ち独乙にして、今の独乙は則ち普国なり。普国は旧独乙の一部のみ。輓近に注釈13迨んで、其の民益々学を励み業を勉め、勇あって方を知る。国、是れに由って注釈14駸々として日に昌んに、力を蓄へ威を養ひ、機を見て動き、勢ひ注釈15決河の如し。注釈16東、墺を挫き、注釈17南、仏を破り、遂に独乙諸部を統轄す。英魯の雄を以て、猶且つ之を畏る。

注釈

52.小学国史の序10-12 53.翻刋徳国学校論略の序1-10 53.翻刋徳国学校論略の序11-17
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