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稿本略註国訳求志洞遺稿 文 乾 稿本略註国訳求志洞遺稿 詩 坤全
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59.子英に与ふ/60.子猛に与ふ 通称寛六郎、亦実弟に係る/61.子英に与ふ
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寓楼は東北に面し、隣屋遮蔽し、眺望全く豁然たる能はずと雖も、赤城山の半部、会津の諸山、中山嶺、横堀駅及び利根川沿岸の村落等、歴々として指点すべし。注釈13雲容烟影、一日の間、幾変化するを知らず。以て人をして之に対して厭ふ無からしむるに足る。豈注釈14造物者の浴客に恵む所以なるか。呵々。
 盛炎保摂せよ。不一。


 六〇、子猛に与ふ 通称寛六郎、亦実弟に係る。
 今日子英の書来り、卿が本月十八日の書を注釈1附致す。言ふ、八日注釈2大隅山高原の役に、奮闘して重傷を負ひ、現に長崎警視病院に在りて治を受くと。之を聞いて注釈3駭然として注釈4酸鼻に堪へず。鳴呼、注釈5賊魁未だ誅に伏せず。忽ち此の惨毒に罹る。心算違へ易く、功名成り難し。痛恨何ぞ言ふに勝ふべけんや。然れども、壮士已(巳)に身を以て国に許す。馬革に屍を裹(裏)み、原野に骸を暴すも、亦甘心する所。事已(巳)に此に至る。只、合に命に安んずべきのみ。
 創重しと雖も、幸に肺を損ぜず、生命に於いて害無しと聞く。稍々注釈6軫念を弛ぶ。然れども、骨傷つき弾留りて患を為すも亦大注釈7苦楚、実に想ふべし。且つ、時方に烈暑にして、創口自ら腐敗し易し。則ち吾が注釈8心何を以てか降らん。只願はくは細心調養し、以て注釈9痊癒を致さんことをのみ。渇望の至りに堪へず。
 急に此の紙を裁す。委曲なる能はず。万々諒察せよ。肩を聳やかして西望すれば、覚えずして神馳せ魂飛ぶ。草々。
 子猛賢弟注釈10硯北。 病兄 虎。
 七月廿八日。上毛伊香保の寓楼に書す。
  子乗久しく注釈11音耗を得ず。近況如何。卿が此の報を聞いて、更に注釈12企想を増す。某六月初旬以来、肝痛起らず。本月十四日を以て都を発し、十六日伊香保に来り、温泉に浴す。日猶浅きが為めに、未だ其の効を見ず。但々尿色漸く薄く、注釈13癢稍々減ず。是れ悪非にあらざらん。幸に深く念と為すこと勿れ。


 六一、子英に与ふ
 念五の書来る。注釈1附致せる子猛の本月十八日の書を見て、其の進撃して重傷を負ふことを詳らかにす。注釈2同胞の情、豈悲痛に堪へんや。然れども弾丸胸を注釈3洞いて、壮士甘心す。奮闘創を被るは、武人の栄とする所。注釈4渠と吾が輩と、皆宜しく此を以て心を安んずべし。但々願はくは、創口の日ならずして癒え、復た甚しくは事に害無からんのみと。此の外更に何をか言はん。魁郎、嬉笑常に復すと聞く。甚慰、甚慰。
 新紙に拠れば、注釈5比日都下暑気毎(つね)に九十度を踰ゆと。困苦想ふべし。此の地、山腹に在り。林壑幽邃、常時も炎熱、既に都下と比すべきに非ず。乃ち二十日より、廿三日に至るまで、又毎夕驟雨注釈6荐りに至り、加ふるに廿六廿七両日の大雨を以てす。凉意益々加はり、午時と雖も、猶暑さを注釈7病へず。喜ぶべし、喜ぶべし。
 某浴して自り、このかた尿色漸く薄く、癢稍々減ず。

注釈

59.子英に与ふ13-14 60.子猛に与ふ 通称寛六郎、亦実弟に係る1-9
60.子猛に与ふ 通称寛六郎、亦実弟に係る10-13 61.子英に与ふ1-7
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