今果して此くの如し。若し之をして身健かに体強くして世用を為さしめば、則ち自ら功名に奮ふに之(これ)遑あらず。安んぞ能く其の文詩の伝ふべきこと此(ここ)に至るを致さんや。 君余より長ずること十三歳、同門の先輩なり。其の学力の根柢(抵)、詩文の佳否は、世の具眼の者之を知る。余唯生きて未だ其の用を尽さず、而して継承するに人無く、其の文詩も亦二甥を待って伝ふるを悲しむのみ。是に於てか序文す。 明治二十六年八月 乾堂 北沢正誠撰